
引用vogue.nl
こんにちは。ブランド古着のKLDです。
ジャンポール・ゴルチエの新クリエイティブディレクターに抜擢された、ファッション界の新星デザイナー、デュラン・ランティンク。
廃棄衣料やデッドストック生地をアップサイクルし、奇想天外な表現やアヴァンギャルドな造形で存在感を高めている人物です。
今回は、
- デュラン・ランティンクとは
- デュラン・ランティンクの歩み
- デュラン・ランティンクを形作るもの
という形でお話していきます。
2024SSでパリデビュー後、瞬く間に頭角を現したデュラン・ランティンクの経歴や人物像に迫ります。
目次
デュラン・ランティンクとは?
デュラン・ランティンク(Duran Lantink)は、1987年に生まれたオランダ出身のファッションデザイナーです。
既存の服をアップサイクルするアプローチを得意とし、従来の枠にとらわれない奇想天外でアヴァンギャルドな造形を生み出す人物です。
また、これまで他のファッションブランドに在籍せず、主に自身のブランドで活動していたデザイナーとして知られています。
そんな彼が、2025年4月15日にジャンポール・ゴルチエの新クリエイティブ・ディレクターに就任することが発表されました。
デュラン・ランティンクは、ジャンポール・ゴルチエに革新をもたらす新世代のリーダーとして注目されています。
デュラン・ランティンクの歩み
自身が立ち上げたブランドで経験を積み、新たにジャンポール・ゴルチエを率いることが発表されたデュラン・ランティンク。
ここからは、彼の生い立ちや経歴についてお話します。
ファッションへの興味を抱いた幼少期
デン・ハーグ 引用wikipedia
デュラン・ランティンクは1987年にオランダのデン・ハーグで生まれました。
生後6ヶ月で父親が他界したため、ドラァグクイーンの友達がたくさんいるシングルマザーの一人っ子として育ちました。
そんなデュランは幼い頃、母親が所有していた「ジャンポール・ゴルチエ」や「W&L.T.」、「メゾン・マルタン・マルジェラ(現メゾン・マルジェラ)」などの個性的な服に触れたり、母親が友人たちとドレスアップする姿を見たりして、ファッションに興味を抱き始めます。
8歳の頃には母親のクローゼットを漁り、安全ピンやテープを使い、彼女の服を切り裂き、自分のための小さな新しい服を作っていたそうです。
そのことで母親からはよく怒られたそうですが、最終的にはお下がりをくれるようになりました。
母親のスタイリングへの関心が、彼のクリエイティブな発想の土台となっているのでしょう。
表現力やセンスを身に着けてきた思春期
11歳頃のデュラン・ランティンク 引用instagram@duranlantinkyo
デュランは、物心ついた頃にはデザイナーズブランドの衣服を解体してつなぎ合わせたり、既存の作品をまったく新しいものに作り直したりすることが趣味になっていました。
12歳の時には、義父が捨てた大量のディーゼルのジーンズと、祖母のテーブルクロスを組み合わせて、ミニスカートを作ったそう。
15歳の時には、オランダのスヘフェニンゲンビーチで、自主的に初めてのファッションショーを開いたというエピソードもあります。
ちなみに、ショーで発表したアイテムはあっという間に売り切れたそうです。
このような体験が、既存の服を再構築するという、彼独自のクリエイションの原点になっているのかもしれません。
「いつも衣服を解体することに惹かれていました。小さい頃からそうしてきました。平らな素材を扱うことにあまり興味を持ったことがなく、スカートをジャケットに変えるなど、服が何か新しいものに変化する可能性を常に感じていました」と、自身も語っています。
また、ファッション業界で働きたいと思うようになったのもこの頃で、特にシャネルのヘッドデザイナーになりたかった、とのこと。
PukPuk 引用instagram@lethal_trash
当時のロールモデルとなるデザイナーは、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクで、デュランは12歳の頃、ウォルターのマスコット『PukPuk』に夢中だったそうです。
複数のファッション・芸術系学校で独自の美学を磨いていく
ファッションへの興味と表現力を加速させていた10代のデュランは、芸術系の高校に進学。
高校を卒業後はアムステルダムに移り、「アムステルダム・ファッション・インスティテュート(Amsterdam Fashion Institute 通称AMFI)」に進学。
AMFIではデザインやテキスタイルについて学びました。
ヘリット・リートフェルト・アカデミー 引用amsterdamart
しかし、学校の方針と合わなかったため、「ヘリット・リートフェルト・アカデミー(Gerrit Rietveld Academie)」に転校し、2013年に卒業。
このアカデミーはセントラル・セント・マーチンズに少し似ていて、“ファッション専門学校”というより“美術学校”のようだったらしく、彼はそこで自由に且つ実験的に、既存の服やデッドストック素材を再利用する技術を磨きました。
その後2015年に「サンドバーグ研究所(Sandberg Institute)」に進学。
サンドバーグ研究所 引用amsterdamheefthet
ファッション産業が直面する環境的・経済的・政治的課題に取り組むことを目的としている「ファッション・マターズ」修士課程を修了し、2017年に卒業。
修士課程での学びは、彼のサステナブルで再構築的なデザイン哲学の形成に大きな影響を与えました。
2016年 自身のブランドをスタート
引用linkedin
デュランは、サンドバーグ研究所を卒業する前の2016年に、自身の名前を冠したブランド「デュラン ランティンク(DURAN LANTINK)」を立ち上げています。
ブランド初期は「ショー形式で作品を発表する」という、いわゆる“コレクションブランド”ではなく、アムステルダムで展示やプロジェクトなどを行う活動が主でした。
なかでも、ブランド立ち上げ前の2014年から取り組んでいた「Sistaaz of the Castle」プロジェクトには、かなりの情熱を注いでいたよう。
「Sistaaz of the Castle」プロジェクトによって撮影された写真 引用janhoek
このプロジェクトは、南アフリカ・ケープタウンのトランスジェンダーのセックスワーカー団体「SistaazHood」との協働で、彼女たちのスタイルや夢を、ファッションと写真を通じて表現する活動です。
「Sistaaz of the Castle」プロジェクトによって撮影された写真 引用janhoek
デュランは「ヘリット・リートフェルト・アカデミー」の同窓生であり、共通の芸術的関心を持つ写真家のヤン・フークと共に、継続的なプロジェクトとして展開しました。
2016年にはデュランたちの作品が、アムステルダムのFoam写真美術館やアムステルダム・ファッション・ウィークで披露されました。
これにより、デュラン・ランティンクの名前は国内外にじわじわと広まることとなります。
多彩なコラボレーションで知名度が向上
2018年には、アメリカ人アーティストのジャネール・モネイに衣裳提供した「ヴァギナパンツ」によって、デュラン・ランティンクは大ブレイク。
「ヴァギナパンツ」を履くジャネール・モネイ 引用instagram@duranlantinkyo
このパンツは、女性器を象徴する大胆なフリルが特徴的で、大きな話題を呼びました。
以降、著名アーティストへの衣装提供やブランドとのコラボレーション依頼が急増。
Brownsとのコラボアイテムを着たルック 引用vmagazine
2019年には、ロンドンの老舗セレクトショップ「Browns」との共同プロジェクト「Browns Conscious」に参加し、Brownsのデッドストックを再構築した多数の一点物アイテムを制作。
2020年には、オーストラリアのブランド「Ellery」の、アーカイブピースのみを用いて制作したカプセルコレクションを発表。
デュラン・ランティンクは、数々のコラボレーションによって知名度が向上していきました。
コレクションブランドとして飛躍するように
2019年には、アムステルダム・ファッション・ウィークで、初の「DURAN LANTINK」としてのランウェイコレクションを発表しました。
引用papermag
このショーでは、マクドナルドの容器、フライドポテト、ハッピーセットなどを身に付けたルックや、消防服のようなワークウェアにチュールを組み合わせたルックなど、彼のアップサイクル手法をこれでもかと詰め込んだユーモア全開のデザインを披露しました。
引用papermag
これまで、プロジェクト制作や衣裳提供、コラボレーションなどに注力し、“コレクションブランド”として活動していなかったデュランが、なぜ2019年を機にコレクションを発表したのか。
それは、2019年にLVMHプライズのファイナリストに選出されたことがきっかけだとされています。
デュランは既製品のカスタムを軸としながらも、より広い市場への展開を意識するようになり、プレタポルテラインへの移行を模索し始めたのでしょう。
2024SS 引用instagram@duranlantinkyo
そして風船のように膨らんだボリューム感や、強調されたシェイプなど、ユニークでアヴァンギャルドなクリエイションを展開し、ファッション界に新たな潮流を生み出しました。
2021SSAW 引用showstudio
2021年のコロナ渦に行った、ドローンがモデルを追いかける形式のショーは、ファッション業界におけるアクセスと過剰消費への風刺的な演出として注目を集めました。
また、デュラン・ランティンクは近年、国際的なファッションアワードでも高い評価を受けています。
2023年にはフランス国立モード芸術開発協会が主催する「ANDAMファッション・アワード」で特別賞を受賞。
2024年には若手デザイナーの登竜門、「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」にて準グランプリにあたるカール・ラガーフェルド審査員特別賞を受賞しています。
2023年秋にはアムステルダムからパリに拠点を移し、2024SSにパリコレデビューを果たしています。
ジャンポール・ゴルチエのクリエイティブディレクターに就任
デュランがパリで活動しはじめてから約2年後、彼に大きな転換期が訪れます。
2025年4月、ジャンポール・ゴルチエがデュラン・ランティンクを新クリエイティブディレクターに任命しました。
ジャンポール・ゴルチエは、2020年にゴルチエが引退して以降、約5年間にわたりゲストデザイナー制を採用してきた中、常任クリエイティブディレクター体制に回帰。
デュランの就任により、プレタポルテラインが本格的に再始動します。
これまでどのメゾンにも属した経験がないランティンクですが、彼の個性的な作品や服に対する価値観などは、「違うことは美しい」「違うことは特別だ」というゴルチエの信念と通ずるものがあるといえるでしょう。
デュランは、この就任に際して自身のインスタグラムで、「ジャンポール・ゴルチエの常任クリエイティブ・ディレクターという大きな役割を任せていただけることに、感謝と誇り、そしてこの上ない幸運を感じています。この新たな章を迎えることに、ワクワクしています。さあ、ここからが始まりです。」と、感謝と決意の気持ちを表しています。
ジャンポール・ゴルチエ氏も、デュラン・ランティンクのクリエイティブ・ディレクター就任に満足している様子。
ゴルチエは「彼には私の若い頃のようなエネルギーと大胆さ、そして服を通じて遊ぶ精神がある。モード界の型破りな風雲児の新たな登場だ」とコメントし、公式に歓迎の意を表明しています。
デュランによるジャンポール・ゴルチエのプレタポルテラインの初コレクションは、2025年9月のパリ・ファッションウィークで発表予定です。
デュラン・ランティンクを形作るもの
“ファッション”ではなく“服”そのものにフォーカスして、オリジナルのデザインに昇華する新進デザイナー、デュラン・ランティンク。
ここからは、そんな彼を形作るものについてお話します。
アップサイクルの美学
デュラン・ランティンクは「服を組み合わせる」というアイデアに没頭した10代の頃から現在まで、そのアップサイクルの美学を貫いています。
「ルイ・ヴィトン」と「グッチ」のショッパーを合体させたバッグは、デュランのマッシュアップ手法の代表作 引用instagram@duranlantinkyo
学生の頃から、パターンやゼロから服を作ることを嫌い、学生時代は異なる要素を組み合わせて新たな価値を生む「マッシュアップ」という手法に磨きをかけていました。
ブランドを立ち上げてからは、素材を開発したり、あえて新たな装飾品を作ったりせず、廃棄される服や生地を積極的に使用して作品を作っています。
(恐らく)タバコを吸っているデュラン・ランティンク 引用instagram@duranlantinkyo
デュランは一見、熱心な環境活動家に見えるかもしれませんが、彼自身は肉も食べるし、タバコも吸うし、タクシーにも飛行機にも乗るため、常に環境を考えているわけではないとのこと。
ただ服に関しては、「服はすでに十分にあるし、新しいファッションを作るために新しいものを作る必要はない」という、環境意識に通ずる考えを持っています。
しかし、彼は“必ず再利用する”と誓っているわけではないそうで、あくまでも自分のストーリーを伝える方法として、「アップサイクル」というアプローチを好んでいるのです。
LGBTQ+を通じたクリエイション
デュラン・ランティンクは、個人的な性については明確に発表していませんが、LGBTQ+コミュニティの活動やデザインは積極的に行っていることでも印象的です。
特に顕著なのは、2014年からスタートした南アフリカのトランスジェンダー団体「Sistaaz of the Castle」とのコラボレーション。
「Sistaaz of the Castle」のアートブック 引用artpapereditions
「Sistaaz of the Castle」のアートブックの1ページ 引用artpapereditions
アートブックの衣装制作を通じて、トランスジェンダーコミュニティの可視化や自己実現の支援に貢献しました。
また、デュランは、ファッションにおいて性やジェンダー表現を大胆に扱うことでも知られています。
引用soen
2025AWコレクションでは、シリコン製の揺れる偽胸をつけた男性モデルをランウェイに送り出し、性別や身体表現の境界をユーモラスに揺さぶりました。
ジーンズの後ろ部分を大胆に切り取りお尻を露出させる「ベアバックジーンズ」や、ゼブラ柄のボディペイントとブリーフ、ブーツを一体化させたルックなど、性を強調するアイテムも多く見られます。
こうした表現は単なる奇抜さではなく、ジェンダーや身体、アイデンティティの再定義を意図したものとして評価されています。
自分の信念を貫く強気な姿勢
デュラン・ランティンクは、ラグジュアリー業界の消費システムに批判的な人物としても知られています。
特に、多くの在庫を抱え、売れ残り分は破棄するというサイクルに対し、単純に売れ残った服が「かわいそう」という感情とともに、過剰な生産社会や消費社会に対する否定的な姿勢をみせています。
様々なブランドで構成された服 引用instagram@duranlantinkyo
近年、ファッション界でも「サステナビリティ」や「SDGs」という意識が中心となり、ある種“トレンド”のようになっていますが、彼はそのような世の中になる前から、ずっと自身のアップサイクルを軸とした信念を貫いてきました。
様々なブランドで構成された服 引用instagram@duranlantinkyo
デュランの独創的で刺激的なデザインは、時に物議を醸すこともありますが、世間の変化を恐れずに自身のビジョンを実践していることからも、外部の評価や意見より自身の信念や好奇心を優先する芯のある性格がうかがえます。
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ここまで読んでくださった方へ
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
アップサイクルという手法を使い、デザインの可能性を押し広げるデュラン・ランティンク。
モノの価値を再定義し、消費社会に一石を投じる彼の表現力を、今後どうジャンポール・ゴルチエで魅せてくれるのか期待が膨らみます。
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